15歳の誕生日を迎えた、その2ヶ月後にソランは旅立ちました。
7月に入り、前立腺癌の緩和治療がはじまり、
その効果が出ていたので、半年頑張ってくれれば・・・と、祈っていた矢先に、
脳疾患がおこり、旅立ってしまいました。
前立腺癌とお伝えしましたが、前立腺癌の確立が100%に近い・・・というのが正確な言い方かもしれません。
前立腺癌かどうかの確定診断をくだすための検査は、年齢、その当時の身体の状態を考え行っていません。
主治医の先生も、薦めませんでした。
ですが、ソランの症状、経過から、前立腺癌であったということは間違いないとのことでした。
ソランの最初の異変は、オシッコの回数が増えたことでした。
病院でそのことを伝え、尿の検査となりましたが、大丈夫だと言われ安心していました。
ですが、その後も回数は増え、トイレではなく廊下でしてしまうこともでてきました。
病院でそのことを伝え、レントゲン、尿検査をしました。
結果、膀胱に異常はなく、尿も大丈夫とのことでした。
血液検査の結果も、いつもと同じ肝臓の数値だけが高いというものでした。
排尿の伝達機能がうまくいっていないのかな?
老化現象かな?と、その時は思っていました。
その後、おしっこだけではなく、うんちのことも気になり出しました。
何度も何度もクルクルと回って位置を決め踏ん張るのですが、
なかなか出ないという症状が目につくようになりました。
ですが、出にくくはなっていても、回数も変わらず出ていましたし、
食欲もあり、体重が減ることもなく、逆に増えていたので、便秘気味なのだろうと思っていました。
おからやヨーグルト、納豆、芋、きのこ類など、便秘によさそうなものを選んでごはんを作っていました。
また、この頃、散歩の時の足どりも遅くなっていて、後ろ足がよろけることが多くなっていたので、
年をとり、踏ん張る力がなくなっているのだろうとも思っていました。
病院で、この様子を伝えましたが、大きな問題として考えられませんでした。
今思うと、排便排尿について、このあたりでしっかり調べていれば・・・と後悔が募ります。
この頃、大きな病気があるとは思っていませんでしたが、
15才の誕生日を迎えたころからは、ソランの身体に対し、不安に思う事が多くなってきていました。
◆日記から◆
5月も終わり。
今日も外は暑かった。
この夏どうなのだろう?
猛暑になるのかな・・・。
老犬には辛いね。
ソラン、大丈夫だろうか・・・
最近見ていて思うのは、
だいぶ老化が進んでしまっているな・・・ということ。
顔つきも、動きも・・・いろいろ・・・
15歳。
仕方ないのだ。
でも・・・
淋しいな・・・ソラン・・・。
なんとかこの夏を乗り切れるように、
工夫をしなくてはいけないね。
ソラン、頑張ろうね!
朝、廊下でクルクルと回り、足をすべらせていた。
その後の足どりも、なんかヨタヨタしていてもつれる感じ。
本当に本当に弱ってしまった・・・とショックを受けた。
夜、足の裏の毛が伸びているからすべるのかも・・・と、
抱っこして切ろうとしたら、今までにない抵抗。
最後には、ヒィーンヒィーンとないていた。
もう叱れないし、まいった。
顔つきもなんだか違う。
淋しい。
本当に淋しい。
でも・・・愛しさもどんどん増していく。
あの顔みたら・・・
かわいくてたまらない。
便秘だったり、おちつかないときにクルクルしているような気がする。
この頃、クルクル回る動作は、脳の方からのものではないかと、新たな不安も持ち始めていました。
(この頃の「脳」については、今、やっと理解できた気がしています。後でお話させていただきます。)
不安な日々の中ですが、こんなことも綴っています。
◆日記から◆
今日あった嬉しいこと
ベッドで寝ていたソランが可愛くて、思わず横に寝そべった。
その時、頭をベッドの枠にズン!とぶつけてしまった。
「痛い!痛いよ〜〜!」と泣くと、
ソランは私に頭をくっつけてきてくれたのだ。
可愛い。。。
なんて可愛い。。。
優しい子だ〜ソランは。。。
ソラン、ありがとうね〜!
今日のソランはなんだか以前の姿をみせてくれて
すごく嬉しかった。
@私の腕枕で寝てくれたこと。
Aごはんを作っている時に、台所にいて、何かちょうだいと、ずっとはりついていたこと。
B廊下を小走りしてたこと。
うれし〜〜い!
こんな普通であったことが嬉しいなんて・・・
喜んでいるのが悲しいような・・・。
あたりまえに思っていた生活が、どれだけ幸せだったか。
その時の思いの、何倍もの思いを、今かみしめています。
6月中旬、通院の日。
体重は変わらず、先生に「いいね〜!」と言われました。
この年になると、痩せていく方が多いとのこと。
スタッフの方が、「長生きさん!頑張ってね!」と、ソランに声をかけてくださった。
ソラン、長生きなんだ・・・
十分理解していることですが、犬生のゴールがすぐそこに見えてきてしまっているような、
寂しさを中心にした、複雑な思いがこみ上げていました。
この日、歩き方を見るために、院内を歩かされたソランをみて、違和感を感じました。
スタスタと院内を歩き回っている。
おかしい・・・。
ソランは病院が大嫌いでした。
恐くて恐くて、病院に入った瞬間から、身体をブルブルと大きく震わせ、
そのソランをみた方は、「よっぽど恐いのね〜!」
「嫌なのよね〜!」と、皆さん笑われていらっしゃいました。
そういえば、このあたりから、待合室での震えもなかったように思います。
クルクル回ることについては、病院でも、たぶん脳からだろうと言われました。
脳に何かあるのでは?という疑問を、現実として考えるようになりました。
その翌日、大きな変化が現れました。
15年間、私はソランのおならを聞いたことがありませんでした。
そんなソランが、大きな音で何度もおならをするようになったのです。
ネットで調べてみたところ、フードを変えた時に、おならが出るという子が多くいました。
消化できないものが含まれているのだということでした。
私はそれを読み、少しホッとしていました。
なぜなら、便秘の原因がフードのせいかもしれないと思い、
以前食べていたフードに切り替えはじめたばかりだったからでした。
また、繊維の多いものも多く食べさせていたので、そのせいではないかとも思っていました。
ですが、フードについては、以前食べていた時に、おならは出ていなかったので、
フードが原因だとは言い切れない不安も残りました。
心配になり、病院へいきました。
直腸からの指診、レントゲン検査、エコー検査。
ここではじめて、「前立腺肥大」という言葉が出されました。
私にとっては、まさかの言葉でした。
ソランは、男の子の病気を防げるということで、1才になる直前に去勢をしています。
ですから、そういう病気にはならないだろうと思っていたからです。
驚きと、ショックと、
前立腺肥大についての知識を全く持っていなかったことから、この日は何の質問もすることができませんでした。
治療は、細菌性で肥大していると考えられ、消炎剤を8日間飲むというものでした。
帰ってきて、前立腺肥大について調べました。
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●高齢犬の、特に去勢していないオス犬におこりやすい。
症状として、現れるのが排尿・排便障害、血尿。
●前立腺が肥大することで、臓器を圧迫するため、排便の格好をとっているのに便が出なかったり(しぶり)、
何度もトイレにいくようになるが、尿が少しづつしか出なくなったり、血尿がでたりする。
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まさしくソランの症状そのものでした。
全て前立腺肥大が原因だったのだと確信しました。
同時に、「まさか前立腺だったとは・・・」と思う自分に対し、腹立たしさがこみ上げてきていました。
私がしっかりしていれば・・・。
病院で、もっと突っ込んで質問していれば・・・。
やっと原因がわかり、治療が始まりました。
◆日記から◆
うんちが出にくい状態が続く。
なんかお腹がパンパンに見える・・・。
食欲はあり、おならはなし。
みのりたちが来てもあんなに大騒ぎしていたのに、反応しなくなった。
すごく大きな変化だ・・・。
淋しいなーソラン。
元気いっぱいになることはもうないのだろうか・・・。
元気ない
なんか元気がない。
1ヶ月前あたりは廊下を走ってたこともあったはず・・・。
辛いのかな・・・
夜中うろうろ
トイレで寝ていたり・・・
薬の効果を祈っていましたが、症状は変わりませんでした。
改めて前立腺の病気について調べました。
大きな不安が襲い掛かりました。
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前立腺肥大の他、前立腺嚢胞、前立腺腫瘍などの病気を患っている可能性も高い。
肥大してしまった前立腺が、癌化する率は、去勢手術とは無関係である。
去勢をしているのに前立腺が肥大している等の場合は、前立腺腫瘍など他の病気を疑う。
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ソラン、もしかしたら腫瘍かもしれない・・・
この嫌な予感がはずれてくれることを祈っていました。
病院で、恐いけれど、腫瘍かどうかということを聞きました。
腫瘍かどうかは、「わからない」とのこと。
はっきりさせる為の検査は高齢のソランにとって辛いもので、
もしも前立腺癌であったとしても、何もできない、しない、という考えが先生の方針でした。
何もできないという言葉に、虚しさ、腹立たしさが込み上げてきましたが、
前立腺癌について調べた際にあった、
『前立腺癌の摘出は血管、神経が集中しかなり危険で難しい手術で、予後もよくない。』
という説明が頭の中にあり、その考えに私も頷きました。
同じ薬を処方され、1週間後受診になりました。
その後も症状は変わらず・・・。
◆日記から◆
今日も1日出が悪い。
少し出ると疲れて熟睡。
この繰り返し。
何度も何度も踏ん張って可哀相。
今後方法はあるのだろうか・・・。
夜中ずっとウロウロしている。
トイレに行ったり来たり。
4時ごろまで続いていた。
オシッコのために起き上がり、うんちのために起き上がり、
クルクル回って踏ん張って、よろけて倒れて、その場に寝込んでしまう・・・。
この頃、尿の方は、1日に28回となっていました。
その後
7月に入り初めて血尿が出ました。
ハァハァと息も荒くなっていました。
頭の中が真っ白になりました。
病院で血尿のことを話すと、先生はすぐに直腸検査をしました。
前立腺肥大が大きくなっているとのこと。
レントゲン、エコー検査。
3cm位の腫瘍がみつかりました。
前立腺の腫瘍かどうかはっきりさせるにはCTを撮る必要があるが、私も先生もしないことで一致しました。
今のソランに、これ以上の苦痛、不安、ストレスを与えることはしたくありませんでした。
前立腺癌の疑いが現実となってしまいました。
年齢のこともあったのでしょう。
抗がん剤治療などの話はありませんでした。
ここからは、どれだけ苦痛をおさえられるかの治療になりました。
癌への効果も期待できるという、非ステロイド性の消炎鎮痛剤を飲み始めることになりました。
この頃、
私は何を思っていたのか・・・。
今も思い出せないでいます。
あまりのショックからか、日記にも何も書かれていません。
前立腺癌
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人間と違い、犬は痛みを我慢しますし、体調不良を訴える事も出来ません。
飼い主が異常に気付いた時には、時期が遅過ぎるのが現実です。
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前立腺の腫瘍で良性のものは報告されていない。
前立腺癌は非常に悪性の腫瘍で隣接臓器への侵入もしくは転移は速い速度で確実に起こる。
腫瘍塊は前立腺皮膜を通して直腸骨盤の筋肉などに侵入し、排便困難を生じたり、膀胱の頸部、尿道に侵入することにより排尿困難を起こす。
転移は腸骨リンパ節を介して肺や腰椎へ起こる傾向がみられる。
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前立腺がんの予後は非常に悪く、無治療なら平均生存期間約1か月。
放射線療法で生存期間中央値約4か月・免疫療法にて6.9か月といわれています。
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早期は無症状に経過し、症状が出るときには転移していることが多い。延命治療が主となる。
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ワンコの前立腺癌は、癌としてみつかってしまったら最後を覚悟しなければいけない病気。
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犬の前立腺癌は転移が早く1〜3ヶ月以内に安楽死をするのが普通だそうで、先生に安楽死を薦められました。
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前立腺癌は、犬では稀な病気で、運が悪かったと思うしかない。
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この病気のことを知るごとに、不安と恐怖で胸がしめつけられていました。
ただ、こんなに早くにソランが逝ってしまうとは思っていなかったことは確かでした。
薬について調べた際のある研究では、
『この薬で、治療した16頭の犬の生存期間は7ヶ月、無治療の犬15頭の3週間と比較して有意に生存期間が長かった。
この効果は転移していない犬において著明であり1年以上であった。』
と、あり、
他にも、
『投薬した場合、平均値6ヵ月、投薬しなかった場合、0.7ヶ月の生存』
というものもありました。
この時点で、ソランが転移していたかどうかはわかりませんでしたが、
薬が効いてくれれば、あと半年は一緒にいられると、希望をもっていました。
「お正月を一緒に迎えられるといい。」
そんな悲しい現実の希望を強く持っていました。
投薬開始した日から、
その希望は叶えられると思うような、効果が出始めました。
まず、前立腺肥大によって、腸が圧迫されるので、便が細く、平たくなっていたのですが、
普通の形のものが出るようになっていました。
排尿排便も、尿の回数も半分に減り、便のしぶりも、出るときだけという嬉しい効果でした。
足どりも軽くなっているように見え、
やっと、ずっと続いていた苦しみから解放されたと、嬉しくて涙が出ました。
このまま、この治療が続けられていたら・・・
どうだったのだろう・・・
運が悪く・・・
そう、「運が悪い」という言葉しか出てこないのですが・・・
喜びが一転することが起きてしまいました。
9日、嘔吐し、その後からハァハァと息も荒く、ずっと目を開けたままで、
辛そうにぐったりとしてしまい、病院に駆け込みました。
強めの吐き気止めを打ち、皮下補液をし、前立腺癌の薬は中止となりました。
明日も受診。
家に帰ってからは、落ち着いているようにみえました。
食欲ももどり、催促もしてきて、安心していました。
ですが、立ち上がった時の後ろ足がおぼつかない。
嫌な予感もしていました。
翌日、
食欲も旺盛で、便も苦しまずに出て、元気になったように見えました。
足の運びもよくなっていました。
病院では昨日と同じ治療。
症状が良くなっていることから、明日から投薬を再開することになりました。
この時、私の中では、今回のことは、薬の副作用ではないかとの疑いもあったため、再開は不安でした。
ですが、素人の私が何を出来るでもなく、
「もう1度薬の量の計算をしたけど、間違いない」と言われた先生に、従うことが最善だと思うようにしました。
翌日12日、投薬再開。
ふと見るとブルブル震えていました。
お昼ごはんも少ししか食べない。
ずっと水を飲み、行ったり来たり。
その後少し嘔吐しました。
そこからぐったりとし、前足がピーンと硬直して曲がらなくなってしまいました。
ヒィーンヒィーンとなき続け、時々ワンと吠える。
もうろうとしている。
すぐに病院へ駆けつけました。
レントゲン検査の結果、肺や骨はきれいだという。
考えられるのは脳とのことでした。
前立腺の治療は中止し、この日から毎日通院し、脳のための治療が始まりました。
◆この頃の日記から◆
前足の硬直がとれ、少し歩けるようになったが、傾いていてヨロヨロしている。
夜中ずっとうろうろ。20〜30分おき位。
うんちがしたいのか、クルクルしたが、足がついていけず倒れこんでしまった。
寝ていてオシッコをしてしまった。
前立腺の方の辛い症状に、また苦しめられていました。
15日には、便をかき出してもらいました。
その際に指が前立腺にあたるのでしょう、前立腺がかなり大きくなっていると言われました。
その時の先生の厳しい表情が頭から離れずにいます。
この日、家に帰ってきてからは、落ち着いて見えました。
ごはんの催促もしてきました。
よろよろしながらも歩けていました。
少しづつだけど良くなっていると思えていました。
ですが、夜からはおちつかず、夜中ずっと目を開けたままでした。
16日。
ソランの様子は変わらず、ぐったりとしていました。
病院では同じ脳の治療。
よろよろするのは、やはり脳のせいで、前立腺で立てなくなるということはないと言われました。
今行っている治療で、良くなってくれる可能性はある。
脳の方がおさまってくれたら、前立腺の方の治療を再開するようにしたいとのことでした。
昨年の同じ7月。
同じ脳の疾患で、同じ治療をし、後遺症もなく完治できたことが心の支えでした。
良くなってくれる可能性はあると、ソランを励ましていました。
ですが・・・
夜から眠れない。
夜中もずっと目を開けてぐったりしたまま。
朝方急に立ち上がり、廊下でオシッコを少しする。
その後倒れこんで嘔吐。
身体を大きく揺らして、もどそうとする。出ない。
その後は息も荒く、目を開けたままでぐったりとしている。
病院へ駆け込む。
ぐったりとして、動かないソランを見て、先生の顔が曇りました。
レントゲン検査。
お腹はきれいだと言われました。
その後エコー検査。
今まで入ったことのない診察室の奥の処置室に呼ばれました。
台の上でぐったりと動かないソランを前に、
腹水がたまっている、
「覚悟して」という言葉が耳に入りました。
「入院しても可哀相だから、今日はずっと一緒にそばにいてあげて。」
何本も注射を打たれ、皮下補液で首がパンパンになったソランを抱きかかえた。
何を思ったのか、
「ごはんは食べさせてもいいですか?」と聞いていた。
馬鹿みたい。
馬鹿です。
帰り際、よくソランに声をかけてくださった女医さんが
「明日またお待ちしてます。」と、大きく頷きながら仰ってくださった。
笑顔をつくり、「来れるように頑張ります。」と言うと、涙があふれ出た。
その後、ずっと目を開けたまま、ぐったりした状態は続きました。
ですが、顔は穏やかで、痛みもなく、苦しそうには見えませんでした。
私にはソランを失う実感がありませんでした。
目の前のソランを見て、現実はわかっているはずなのに・・・。
夜7時28分。
ソランは旅立っていきました。
長々とソランの経過について綴ってきましたが、
ソランの直接の原因は脳疾患だったと、はっきりしたのは、8月に入ってからです。
脳に何かが起きたことは事実としてわかっていましたが、
前立腺癌の症状で苦しんだ姿が、心にも頭にも重くのしかかっていて、
前立腺癌が原因・・・・との疑い、また、その薬のせいではないか・・・との疑いが頭から離れずにいました。
ソランがいなくなり、何もできずにいましたが、
8月に入り、動き出さなくては・・・と思い、はじめにしなくてはいけないと思ったのが、このページ作りでした。
改めて前立腺癌についてのことを調べてみて、転移のことが気になりました。
ソランは、亡くなる直前、「お腹はきれい」と言われています。
12日にレントゲンを撮った際も、「肺も骨もきれい」だと言われました。
「肺は年をとると曇った感じになるけれど、この子はシャープだ。」とも言われました。
転移はなかったのだと思いました。
飲んでいた薬について、
『転移していない犬において著明であり、1年以上であった。』
という一文が、胸をしめつけます。
『早期は無症状に経過し、症状が出るときには転移していることが多い。』
『犬の前立腺癌は非常に悪性の腫瘍で隣接臓器への侵入、転移が速い速度で確実に起こります。』
前立腺肥大とわかった日、腫瘍とは言われなかった。
2週間後に再び直腸検査、エコー検査をして腫瘍がみつかった。
たった2週間で、そこまで進行してしまうのか・・・。
転移は速い速度で起こるという・・・
でも、症状が出てかなりの時間があったのに、ソランは転移はしていなかった・・・。
あの後、期間をあけず、転移がはじめるところだったのだろうか?
速い速度というのは、どんな単位なんだろう?
何日?何ヶ月?
でも、あの手の硬直・・・
やはり脳が原因ということか・・・・。
いろいろ考えると胸がもやもやしてきてしまい、
やはり病院へ伺って、話をしてこなくては・・・と思い、
ずっと挨拶にも行けずにいた病院へ、8月に入ってから伺いました。
先生からの説明では、やはり原因は脳疾患とのことでした。
脳梗塞を疑われているように仰っていましたが、
脳出血等の可能性もあるからか、「脳疾患」と仰られたと思います。
前立腺癌であったことも確かであったと仰られました。
「あんなにおとなしい子が、最後の方にはすごく怒ったりしたよね?あれも脳からだったと思うよ。」
そうでした。
病院でのソランは、まな板の上の鯉の状態で、何をされても動かずじっとしていました。
ですが、最後の方の診察では、体温を測るときや、注射の時に先生や看護士の方の手を噛もうとするしぐさをみせていました。
この日、ソランと長年通った病院にいることがとても辛く、緊張もひどく、詳しく質問することができなかったのですが、
家に帰ってきてから、脳の病気について調べてみると、
脳腫瘍の症状で、「性格や行動が変わる」というものがあるとわかりました。
例えば、通常穏やかな犬が急に攻撃的になる、通常静かな犬がひっきりなしに吠える、などが例としてありました。
思えば、恐くて恐くてブルブル震えていた病院内を、スタスタと歩き回っていたことも不思議でした。
家でも、私が足の裏の毛を切ろうとしたら、抵抗してきたり、ないたりすることもありました。
大好きなみのりたちが来ても、反応がない時もありました。
今までにないことが、前立腺癌の症状と混ざりながら出ていました。
脳腫瘍の症状で「旋回運動」というものもありました。
排便時、クルクルクルクル回っていた動作。
排便時だけでなく、ご飯の支度をまっている時にも旋回していました。
どちらもおちつかない時でした。
おぼつかない足どりだというのに、クルクル回る様子は違和感がありました。
脳腫瘍だったかどうかは、わかりません。
でも、もしかしたら、最後の原因も、脳腫瘍が関係していてのことだったのかも・・・とも思ったり。
旋回を思うと、痴呆であったのかなとも思ったり。
医療に素人の私が勝手に想像しているだけで、この点は、わからないままとなってしまいましたが、
脳の指令で動かされていたということは確かだと思います。
前立腺の病で身体は悲鳴をあげてるのに、脳の指令で動かされていた。
それがはっきりわかった今、2重の苦しみを背負っていたのだと思うと胸が張り裂けそうになります。
もっとちゃんと支えてあげたかった。
今、もう1度だけ逢えたら、
「よく頑張ったね。。。わかってなくてごめんね。」って思いっきり抱きしめたいです。
先生は、
「残念だけど、何が起きてもおかしくない年だったよね。これ以上苦しませるのは可哀相だったよね・・・」
というようなことを仰られました。
確かに、脳疾患が起こっていなかったとしても、前立腺癌が進行し、転移してしまったら、
これまでの苦痛とは比べられない位の、辛い苦しい日々を過ごすことになっていたと思います。
ネットで前立腺癌について調べていた際、
転移後の苦痛から解放させてあげたいと、安楽死を選ばれた方のページを見ました。
転移する前に、今後の我が子の苦痛を考え、安楽死を選ばれた方もいらっしゃいました。
愛する我が子のことを思っての決断ですが、どちらもとても苦しんでいらっしゃいました。
「便が出なくなったら安楽死」と言われた方もいらっしゃいました。
安楽死の決断が「便が出ない」なんてこと・・・・耐えられないことです。
ですが・・・
どんな原因であれ、我が子が目の前で苦しんでいたら、楽にしてあげたいと思うでしょう。
楽にしてあげること、救うことが、「死」だけであるということが、やりきれず、悔しく、苦しい。
私がその決断を迫られたら・・・
どうしていたでしょう・・・。
ソランの病気について、
長く長くなってしまいましたが、細かく経過をお伝えしたのは、
男の子のご家族の方に、前立腺癌について知っていただきたかったからです。
私の思い違い、無知。
去勢をしていれば、前立腺の病気にはならないと思ってしまっていました。
ソランの排尿排便の変化について、前立腺を疑うことが早くに出来ていたらどうだっただろう・・・。
進行が早い病気であったにしても、症状に気づいた時点で適切な治療が出来ていたら・・・。
この思いはきっと一生残ると思います。
ソラン、ごめんね。
本当にごめんなさい。
後悔ばっかりです。
お友達のママは、「去勢すれば前立腺癌にはならない」と言われたと仰ってました。
前立腺癌になってしまった子のママが、今後の治療方法などについて質問されているページがあったのですが、
その回答のひとつに、「若いうちに去勢しておけばよかったのに」というようなものもありました。
私と同じで、去勢すれば、前立腺の病気は防げると、思われてる方がいらっしゃいます。
ネットでは、
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犬の前立腺腫瘍の原因は、現在のところ不明で、精巣の性ホルモンが関与していると考えられていますが、
明確ではないようで、前立腺腫大は6歳齢以上で、去勢手術を行っていない雄犬によくみられます
若いうちの去勢手術が一番の予防となります。
未去勢の場合は特に発症しやすいシニア期になったら健康診断や、排便排尿のチェックをし早期発見、早期治療を心がけましょう。
予防法は無いが、犬が若いうちの去勢手術は比較的有効な手立て。
ホルモンや年齢との関与が深い病気なので早期の去勢手術による予防が期待できます。
未去勢で老齢期を迎えたワンちゃんには日頃から排便・排尿時の観察をしてあげることが大事です。
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前立腺肥大、前立腺腫瘍、いったいどちらのことを言っているのかわからなかったり、
去勢が一番の予防とあると書かれていると思えば、予防は無いが、去勢が比較的有効な手立てと曖昧に書かれていたり。
「予防」という言葉の意味を知りたくなります。
悪い事態の起こらないように前もってふせぐ
こと。
予防(よぼう)とは、想定される悪化に対して事前に備えておくこと。
「前もってふせぐこと」・・・
去勢をして、防いでいたはずなのに・・・。
「未去勢の場合は特に発症しやすいシニア期になったら・・・」
「未去勢で老齢期を迎えたワンちゃんには・・・」
去勢していれば大丈夫だろうと思ってしまいます。
ですが、
犬の前立腺肥大の予防
去勢することで、ある程度前立腺の肥大は止められるが、肥大してしまった前立腺が癌化する率は、去勢手術とは無関係。
と、きちんと去勢とは無関係と書かれているページもありました。
なんでわかっていなかったのか・・・。
15年前に植えつけられた、私の思い違いの情報は、どこから得たものだったのか・・・。
その記憶もはっきりとしません。
悔いばかりです。
このページをお読みいただいた方で、
私と同じ思い違いをされていらっしゃった方がいらっしゃるかどうかはわかりませんが、
もしいらっしゃっいましたら、どうかソランの症状を心にとめておいていただきますようお願いいたします。
オシッコの回数が増えた。
トイレ以外でしてしまうことがでてきた。
何度も何度も踏ん張っても便がなかなか出ない。
便が細い、平べったい。
ソランの場合、女の子がオシッコをする時のような、腰をかがめるような姿勢をとっているときもありました。
この姿勢も、症状のひとつのようです。
こんな症状が目についたら、前立腺を調べてもらってください。
去勢した子も、していない子も、同じ症状が出て、腫瘍の疑いも同じだけあります。
この点を、覚えておいていただければと思います。
おならのことを症状として説明されているところはひとつもありませんでしたが、
ソランはおならが出ることに違和感を感じ、その後前立腺の病気とわかりました。
それ以前に、便が出にくいという症状が早くに出ているので、
お腹が張って、おならが出ることはあるのかもしれません。
直接の症状ではないのかもしれませんが、
普段しない子が頻繁にするようになりましたら注意してあげていただきたいと思います。
また、私がソランに重大な病気があるとは思わなかった原因のひとつに、
食欲が落ちず、体重も減らなかったことがあります。
7月に入ってからも、催促してくることもあるくらい、食欲はありました。
痩せていくことが病気の進行、ではないということもあります。
ソランが最後まで、食いしん坊だったのかもしれませんが、
こういう子もいるということも覚えておいていただけたらと思います。
私の後悔は、去勢をしていれば大丈夫という思い違いと同じくらい、
なぜ、病院で問題視されなかったことを、安心としてしまっていたのかということがあります。
今、このページをつくるにあたり、経過を改めてみていると、
先生を信頼していたとはいえ、なぜ、もっと強く疑問をぶつけなかったのかと、思う場面が複数あります。
ソランを苦しめた時間が長くなってしまった。
大きな大きな後悔です。
私と同じ後悔をしてしまう方が、どうかいらっしゃいませんように・・・。
前立腺癌は、上記にあるように、発見後、厳しい病気です。
早く発見し、治療を始め、1日でも長く生きてくれることを願うのですが、
何よりも、その子の苦しみを減らしてあげていただきたいと思うのです。
ですが、治療をしていても、副作用、転移・・・
避けられない辛いことも出てきます。
苦しさから解放してあげることが最後の愛の形となることもあるかもしれません。
・
・
・
・
・
今、綴っていて、
自分が何を言いたいのかわからなくなっています。
早期発見を願ってこのページを作っているのに、希望も感じられないなんて・・・。
ソランが亡くなる1週間前のこと。
夜中何度も立ち上がり、廊下でうんちをしようと頑張っていました。
よろける足で踏ん張り、体制が崩れ倒れこむので、
ソランが起き上がる度に私も起き、横で支える準備をしていました。
ですが、この日、寝不足も続いていたためか、朝方寝てしまっていました。
ふと目が覚め、ソランがいないことに気づき、急いで廊下へ行きました。
廊下の隅で震えながら丸くなって寝込んでいたソランの姿が、今も私の胸を切り裂きます。
やっと出した便は、前日打った注射のせいかゆるく、
その便の上に倒れこんで寝てしまっていました。
急いでシャワーで流し、ドライヤーをかけました。
腕の中で目を閉じているソランをみつめ、
苦しんでる時に寝てしまって、心も身体も支えてあげることができなかった自分のふがいなさ、
ソランへの申し訳なさで涙がとまりませんでした。
「ソラン、もっと一緒にいたかった。」
この思いはいつもあります。
ですが、その度に、ソランのあの日の姿が目にうかび、
そして、「もう可哀相だった・・・」と諦めるのです。
小さな身体で痛みを耐えている姿を見ているのは、とてもとても辛いです。
何があったのか、どうしてほしいのか、
会話が出来ないことがこれほど恨めしいことはありません。
苦しみを取り去ってあげたい。
幸せと感じる時間をたくさん過ごさせてあげたい。
できるならば、
できるならば、
1日でも長く。
早期発見で、この願いが叶いますように、心から祈ります。
今、闘病中のわんこたち、
身体に変化が起きたシニアのわんこたち、
そしてそのご家族の方々に、私とソランからエールをおくります。
今日も明日もあさっても、
その先も長く、長く、
大好きな人(わんこ)と笑顔を交わせますように。。。
目にはみえないけれど、
固く結ばれた絆をしっかり握り締めて、
力を合わせて頑張ってください。
長い長い、まとまりのない、意味不明なページになってしまい申し訳ありませんでした。
最後までお読みいただきまして本当にありがとうございました。
2013・8・21