RoomNumber503  Mikisuke





503号室のみきすけ君のニックネームは「ヒヨコ画伯」。

黄色みがかった優しい毛色と小さくて愛らしい感じがヒヨコにそっくり・・・と

いつからか「ヒヨコ画伯」と呼ばれるようになったのだそうです。

ヒヨコ画伯。

そうです、みきすけ君は絵描きさんなのです。

子どもの頃、初めてきりんを見てから、あの長い首に惹かれ、

それ以来時間を作っては動物園に足を運んだというみきすけ君。

「ある日ね。いつものようにきりんさんを見ていたの。

長い首をたどってきりんさんの顔を見上げた時、

ボクの目に真っ青な空と眩い光が飛び込んできたの。

あんなに美しい空、それまで見たことなかった!

その感激を忘れたくなくて、持っていた手帳に急いでスケッチしたの。

でも、絵を描くなんてこと、したことがなかったからすごく下手でね。」

みきすけ君はその時のスケッチを思い出したのか、クスクスと笑っています。

「あの空を描いてみたい!その一心で絵を勉強したんですよ!」

そんなエピソードからヒヨコ画伯が誕生したなんて素敵。。。

ところでみきすけ君、その美しい空の絵は完成したのですか?

「ううん。まだ描けないの。あの空はボクの一生をかけての宿題なの。

もしかしたら、ううん、たぶんきっと一生頑張っても描けないと思う。」

みきすけ君はニコニコしながらそう言います。



みきすけ君の心の中に描かれた、あの日の空。

それは、みきすけ君だけの大切な宝物なのかもしれません。



Photo By Chikako
Story By Soran’s